とくお組モブログ
いつも手元にとくお組

光景

IMG_3007.JPG

写真は関係ありません。

明日から一泊で研修があるけれども、基本的にはようやく少し落ち着いた。
やっと自分のことができる。

前にどこかで書いたかもしれないけど、去年、近所の喫茶店によく通っていた。
そこの店員さんを気に入っていたというか、ぶっちゃけ、映画に出てもらいたいと考えていたからだ。
若かりし頃の遠山景織子みたいな、今時珍しい、薄幸そうで透明感のある美人さんだった。

ある日、僕がいつものようにその喫茶店に行くと、その店員さんが私服姿でカウンターに座っていた。
そこの喫茶店では、バイト終わりや休みの日に、店員さんがカウンターでコーヒーを一杯、店長からおごってもらう風習があった。
「今日はもう終わりなのかな。」
そんなことを考えながら、僕はカウンターの向かいの四人席に座り、おもむろに脚本を書き始めた。

だいたい15分くらい経った時だった。
カウンターからうっすら「じゃあ、帰ります」みたいな声が聞こえた。
店の奥から店長が「はい、お疲れ様ー」と返した。
僕は、パソコンからカウンターへと目を移した。
カウンターに座る、店員さんの後ろ姿が見える。
店員さんはコーヒーを飲み干すと、荷物を持ち、すっと立ち上がった。
そして、ゆっくり振り返ると、すっと一回、店内を見回した。

なんだか僕には、店員さんのその姿がスローモーションで見えたように思えた。
その光景は、僕がこれまでに見た、どんなものよりも美しい光景だった。
僕は思った。
「ああ、この人は今日、この店をやめてしまうんだ。」

それから何回かあの喫茶店に行ったけれども、やっぱりあの店員さんはいなかった。
代わりの店員としては、なんか明るいAKBみたいな女の子が入った。

僕は、あんな光景を撮りたいといつも考えている。
あれこそが映画なのだと、僕は信じている。


Posted by 北川 on 8月 4th, 2015 :: Filed under 日常
You can skip to the end and leave a response. Pinging is currently not allowed.

Leave a Reply

Type your comment in the box below: