大好き
数年前、「かわいい」という言葉が死んだ。
何を見ても「カワイイ!」、何をされても「kawaii!」。
あの時感じた。
ああ、「かわいい」という言葉は死んだのだ。
そして今、「大好き」という言葉が、死のまさに目の前にいる。
40とかのおばさんが「〜も〜も、だーい好き!」、数人の女性が、不可解にいきなりカバンにキスして「大好き!」。
あまりの痛さにヘドが出る。
あそこにあるのは、「本当に大好きなのだ」、という感情ではなく、「大好きって言葉って、すっごいカワイイよね!」という中身のない、浅はかな、まさにファッションでしかない「大好き」だ。
僕は、「大好き」という言葉がとても好きだ。
映画や漫画で、超つまらないものを見ていても、ラスト辺りでいきなり女の子が男に「大好き」と言うだけで、ああ、なんかいいもの見たな、という気持ちになる。
DAISUKI!という番組も、その番組名だけでなんだか好きだった。
僕の大好きな、「大好き」を殺さないでおくれ。
僕の大好きな「大好き」を、僕から奪わないでおくれ。
確かに僕は、色んな女性から「気持ちが悪い」と言われることが多い。
しかし、いきなりカバンにキスして「大好き!」とか言い出す奴の方が、僕から言わせれば、僕よりよっぽど気持ちが悪い。
普通に考えて、あんなの本当に頭がおかしい。
そんなに好きなら、カバンと裸で抱き合ってみればいいし、それでもおさまらないなら、カバンと結婚でもしてみればいい。
本当に大好きだったら、できるはずだ。
こういうことを言うと、「金麦のCMもそういう感じじゃん」とか言い出す人もいると思う。
でもそれは違う。
全然違う。
バカなことを言うな!
黙ってろ!
金麦のCMは、「大好き」という言葉が、かわいさだけではなく、切なさをも内包しているということを、適切に理解している。
「大好き」って言っときゃかわいいだろ、くらいの適当さでしか「大好き」を使っていない、あのカバンやブラのCMと一緒にしないでもらいたい。
そう、「大好き」ってのは、切ないからこそ最高にかわいいし、最高にいい言葉なんだ。
今回のこれ、どうせ伝わらないんだろうな。
悲しい限りだよ、ほんと。
「大好き」はもう終わりだね。
さようなら、「大好き」。
大好きだったよ。
Posted by 北川 on 9月 17th, 2012 :: Filed under 日常
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9月 18th, 2012
名文ですね!爆笑しました。