とくお組
2003年慶應義塾大学の2つの劇団(劇研・創像工房in front of.)のOB・現役を中心に旗揚げしました。主にコメディを作っており、宇宙船の機関室や画家の脳の中といった「非日常」世界で、キャラクターたちの心理や言動は「日常的」に描くという作風です。HPにて主宰・徳尾浩司の会社員コラム連載中。
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怒りのタンメン
[日常] 今まで行ったことのなかった近所の中華料理屋に入った。
70代くらいの老夫婦が営んでいる小さく小汚い定食屋で、メニューはすべてマジックで手書き。価格のところは何度も上書きされている。ラーメンや玉子丼は500円なのに、天津麺になると900円に跳ね上がり、チャーハンは650円なのに、豚汁をつけると900円になるという、全体的に価格の感覚が少しバラバラな印象を受けた。
お客さんはぼくの他に、スポーツ新聞を広げて餃子をつついているおじさんが一人。まあ、可もなく不可もないよくある小汚い店だなと思い、タンメンを注文したところ、しばらくして厨房の老夫婦が言い合いを始めた。
どうやらご主人の方が昨日の客に「味がない」と言われたことを気にしているようで、奥さんの方が「あれは一緒の連れの人が『なんだ、味あるじゃない』と言って収まったじゃないの」となだめていた。
それでも不機嫌な主人は、ちょうどフライパンが洗われている事に気づいて「お前今から使うのに何洗ってんだよ!」と声を荒げ、奥さんも「そんなこと言うなら自分でやりな!」とフライパンをガシャンと上げた。ぼくは思わずビクっとなった。
店のテレビでは「ごきげんよう」が楽しげに沸いているのに、店内は張り詰めたムード。
すると、おじさんの客が食事を終えて席を立った。ちょっとおじさん帰るなよ!と心の中で思っていたら、これまた会計の時に奥さんがお釣りを間違えたらしく、主人が「釣りも数えられないのかよ!!」と言い出して奥さんは「△×※◎!!!」と言葉にならない言葉を発しながら、ガッシャーン!!とレジを閉めた。
「タンメンおまちどう」
面食らっているうちに、主人が目の前にタンメンを置いた。いつの間にかおじさん客はいなくなっていたし、奥さんも普通に背を向けて皿を洗っている。もしかしたら、いつもこの店はこんな感じなのかもしれない。端から見れば喧嘩に見えるけれども、二人にとってはありふれた日常というか、いや、まあ、ちょっと情熱的すぎると思うけれど。まあ、うん、そういうことにしよう、と思いながら一口。
味が無かった。
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日常 日時: 2012年04月11日 20:42 |
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