献血狂想曲
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大学図書館に行く途中に、献血カーが停まっていた。


献血キャラクターのけんけつちゃん。

普段から世の中に対して特に貢献しているわけでもないし、いっちょ献血でもしてみるか(やったことないけど)と思い立ち、受付に申し出た。

テントの中で強制的にジュースを飲まされたり、六ヶ月以内に新たな異性と性的接触したことはありません、などに○を付けた後、内柴さんは献血できないのかなとか思いながら、献血カーに乗り込んだ。

中はキャンピングカーみたいに色々とカスタマイズされていて、複数台あるベッドの上では既に数人が血を吸い取られながら横たわっていた。

さらに中で待つこと10分、いよいよ自分の番が回ってきた。血を採られること自体に抵抗はないし、体調も悪くない。刺されるときは少々太い針で痛かったが、400ミリぐらいなんてことないだろうと思って気楽に構えていたところ。

「あと半分くらいですねー」と看護師に言われたあたりから急に頭がクラクラして、目の前が真っ暗になった。このまま耐えられるかなと思ったが、結局「あ、すいません、気分が悪いです、あー」と言って途中でやめてしまう羽目になった。

事前にもらっていた手元の冊子によると、採血途中で気分が悪くなったり失神したりする副作用は全体の0.9%だそうで、その約100人に1人が自分になった。看護師も申し訳なさそうに「260ミリいただきましたが、これでは輸血には使えないので、まあ、緊急用に……」と言っていた。

「君はうちの秘密兵器だ」みたいなものだろうか。こんな自分にも何かできることはないかと身を削った血ですら、お役に立てなかった。

献血カーの看護師たちは、ぼくのカルテを回しながら「VVRの方、血圧もう一回でーす」「VVRの方、回復しましたー」「VVRの方、お帰りになりまーす!」と言い合っていた。

VVRとは緊張で気持ち悪くなる「血管迷走神経反応」という副作用のことらしい。帰りにドーナツを二つ手渡されたVVRは、申し訳ない気持ちでいっぱいのまま、とぼとぼと献血カーを降りた。

もしぼくが中学生だったら、次の日からあだ名はVVRになっていたに違いない。


日常 日時: 2011年12月07日 18:47 | 

とくおNOW

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