とくお組
2003年慶應義塾大学の2つの劇団(劇研・創像工房in front of.)のOB・現役を中心に旗揚げしました。主にコメディを作っており、宇宙船の機関室や画家の脳の中といった「非日常」世界で、キャラクターたちの心理や言動は「日常的」に描くという作風です。HPにて主宰・徳尾浩司の会社員コラム連載中。
« 心臓マッサージが覚えられない
|
メイン
|
店内で売っているコーヒー豆 »
黒い布を身にまとったアーティスト
[日常] 喫茶店で、隣に座っていた男が女の子を面接していた。
男はぼくの真隣に座っていたので顔はよく見えなかったのだが、横目で見た限りでは、黒いカーテンみたいな布を身にまとった長身の若い男であることが分かった。そこに美大生風の金髪の女の子がやってきて面接が始まったのだ。
その男はさっそくMacの画面を見せながら「ボクはこういう写真を撮っているんだ」「原宿で撮っているんだ」「そこで今回はボクのアシスタントを募集しているんだ」「30人見て、採用するのは10人ぐらいだから狭き門だが」と一通り話し終わって、
「さ、自己紹介でもしてくれるかな」と女の子に振った。
隣で聞いてるだけでもイライラするというか、ぼくはやっぱりこういうアーティスト風情の男が大嫌いだと思った。その男がどんな写真を撮るのか知らないが、その高飛車な話し方も、黒いカーテンみたいな布も気に入らない。本物のアーティストは自分を着飾る前に、創作物と向き合うので精一杯なハズだ。
こんな偽物に騙されるなよ?と思って女の子の顔を見ると、案の定ポーーッとしているではないか。
「えっと・・・大学では空間デザインをやっています」
「ふうん、空間デザインとはどういうもの?」
「ええっと・・・いろいろありますが、私は舞台のデザインのようなこともやってます」
「それって楽しい?」
「いや、まあ、楽しくはないです(はぁと)」
終始こんな感じである。
なんで君はそんな男にヘラヘラしているんだ?そんなに安っぽい女じゃないだろう?空間デザイン、本当は楽しくやってるんじゃないのか?こんな男の取り柄なんて、どうせ部屋がちょっと小綺麗なだけだぞ。目を覚ませ!第一、アシスタントを10人雇うってどういう規模だよ!
数々の負け惜しみを心の中で叫びながら、とりあえず帰る準備をして席を立った。去り際にどんなツラか見てやろうとチラッと目を向けたのだが、すっげえイケメンでやんの。
Tweet
日常 日時: 2011年08月03日 22:30 |
パーマリンク
« 心臓マッサージが覚えられない
|
メイン
|
店内で売っているコーヒー豆 »
とくおNOW