クソみたいな弁当屋
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[日常] 近所にクソみたいな弁当屋がある。

と言っても、僕は非常にハマっていて最近よく利用している。店主はおじさんが一人いるだけで、メニューは短冊に手書きで書かれたものが貼り付けられていて、シとツの区別がついておらず、メソタイ・コロシケ弁当などと書いてある。

初めて店に行った時、誰もいないので「すいません」と声を掛けると、店主は奥からチラッと顔を見せただけで出て来なかった。なるほど、ここから言えばいいのかと大きな声で「唐揚げ弁当ひとつ」と言うと、特に返事もなく動き始めた。

あらかじめ揚げてあった唐揚げをパックに詰めて、途中「ひるおび」が気になってご飯をよそう手を止めたりしながら、ビニール袋に入れて、ようやく店頭に出てくるとドンッとそれを置いた。

無言である。

え?「唐揚げ弁当、580円です」とか、そういうの無いの? と面食らいながらも、小銭を出して、店主に手渡そうとしたら、今度は小銭を入れる受け皿を指差した。ここに置けというのである。すごい、これは無愛想にも程がある! 徹底してる! とむしろ感心した。

もちろん「ありがとうございました」もなく、すぐに店の奥に引っ込んでひるおびを見始めた。もう、意識はずっとひるおびなのである。そんなに面白いか、ひるおび。(ちなみに、テレビ対しては「……明日、雨かよ」などと声を発する)。

それから数回通ったのだが、昨日はカレー弁当を買って、おつりをもらうときにその店主が「……(スーッ)」と息を吐いたことに気が付いた。

その時は大して何も思わなかったのだが、家に帰ってカレーを食べていると、ふとその事が頭をよぎり、ある可能性が思い浮かんだ。あのクソ店主、もしかして、「(ありがとうございま)スーッ……」と言ったのではないか? と。

思わずカレーをすくう手が震えた。あいつは頑張って、勇気を出して、僕に精一杯のお礼を言ったのではないか? と。こっちの思い違いかもしれないし、結果的には息漏れでしかなかったけど、そうではないか? と希望を持たずにはいられなかった。やればできるじゃん!

次はもっと大きな声が出せることを祈りつつ、僕は明日もその弁当屋に通うだろう。

ちなみに、全然美味しくない。


日常 日時: 2017年04月14日 16:48 | 

とくおNOW

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